良い子ちゃんを演じ、
周りの人からの評価をもらうことが
唯一、自分を価値づけること。
その考えは、
今も曲げられません。
正直、褒められたいのです。
でも実際、人に認められる自信もないし
そのための努力をしようにも
体が動かない。
自分の「~したい」という心に正直になる部分、
作りたい。
人づきあいが苦手である根本的な原因の一つは
自分自身との付き合い方が下手というところにありそうだ。
(自己判断)
人様を笑顔にしたかったら
まず、自分自身を笑顔にするぐらい
できなくちゃですね。
▼自分の状態によく似た例を発見したので、ここに貼り付けておく。▼
「ウツ」で休職中の私が、なぜ遊びには行けるのか――E子さん側の言い分
――「うつ」にまつわる誤解 その(6)
http://diamond.jp/series/izumiya/10006/
<引用>
前回(第5回)に登場した出版社に勤めるE子さんのケースについて、今回はE子さん側に視点を移して、彼女の中でいったい何が起こっていたのだろうかということを考えてみましょう。
小さなつまずきのはずが・・・
E子さんは、有名私立大学を卒業後、念願だった出版社に就職しました。当初はかなり張り切って、意欲的に仕事を覚え、残業も意に介さず頑張っていました。部内での人間関係もとても円満で、与えられた仕事はきっちりこなすしっかりした仕事ぶりなので、上司のTさんも、良い新人が入ってきたと高く評価していました。
そんなE子さんが不調を感じ始めたのは3年前、上司のTさんからある企画内容について軽い注意を受けたことがきっかけでした。
「君の思い入れはわかるけど、ちょっとこれはこの仕事の本筋からズレてしまっていると思うんだ。理想論としては君の言う通りだけど、会社が求めている内容は、もう少し一般受けするものなんだよ」
E子さんは、その企画についてはかなりの自信を持っていただけに、Tさんの言っていることは頭ではわかるけれども、心の奥では自分の存在価値そのものが否定されたように感じてしまったのです。
「はい、わかりました。すみません。もう一度練り直してみます」
いつもの笑顔でどうにかその場はやり過ごしたものの、仕事が終わって一人暮らしの部屋に帰ってから、E子さんは無性に虚しくなってきて、気づくと買い置きしてあったスナック菓子やインスタント食品を、お腹も空いていないのに次々に無茶食いしていました。その最中は、まるで何かに取りつかれたようで、何の感情もありませんでした。
正気に戻って、散乱したゴミの山を見たE子さんは、「何をやってるんだろう! 私って、本当にダメな人間なんだ」と強い自己嫌悪に陥りました。しかし、この日を境に、E子さんは過食をするのが習慣になってしまったのです。
自己嫌悪から自信喪失へ
体にも現れる“異変”
希望に燃えて就いた仕事だったのですが、「頑張ったからといって必ずしも評価されるとは限らない」という現実を、E子さんは受け止めきれずにいました。学生時代までは、E子さんの努力は常にプラスに評価されてきたからです。
「ちょっと真面目に考えすぎるんじゃない? もっと力を抜いて発想してみたらいいと思うんだけど」
上司のTさんからのアドバイスも、本当のところでは意味がわかりませんでした。「真面目に努力することが大切だ」とばかり幼い頃からいつも叩き込まれてきたために、それが問題だと言われてもE子さんは混乱するばかりでした。次第にE子さんは、全体的に自分の考えや感覚に自信が持てなくなっていきました。
そのうち、このような状況になると決まって強い頭痛や吐気、めまいや腹痛などが起こるようになり、E子さんは会社を休まざるを得なくなりました。これらの症状は、繰り返される度に重症化し、休む日数も長くなっていきました。
しかし彼女自身は、この体調不良がメンタルな問題から来ているとはまったく思いもしませんでした。
「ウツ」で休職中の私が、なぜ遊びには行けるのか――E子さん側の言い分
――「うつ」にまつわる誤解 その(6)
http://diamond.jp/series/izumiya/10006/?page=2
「大切な仕事だから今度こそ頑張って挽回しなければと思っているのに、どうしてまた体調がおかしくなるんだろう?」とE子さん自身、途方に暮れていたのです。
内科や婦人科等をいくつも受診して様々な検査を受けたりしてみたのですが、どこでもこれといった異常は見つからず、判で押したように「ストレスでしょう」と言われるばかりでした。しかし、いくら漠然と「ストレス」と言われても、E子さん自身には何のことやらピンと来ませんでした。
しかし、あるところで強く勧められて、不本意ながらも心療内科を受診したところ「うつの可能性があります」と診断されて、E子さんはとても驚きました。
「何もしていない自分」を
責めるばかりの日々
「うつ病なので、抗うつ薬をしっかり飲んで、自宅療養に専念して下さい」という説明と指示のもと、E子さんは会社に診断書を提出して、長期の病気休職に入ることになりました。とにかく、ゆっくりと休むことが大切だと言われたので、E子さんはなるべく何もせずに日々を過ごすように心掛けました。
しかし、いくら休んでみても、E子さんは「何もしていない自分」を責める気持ちばかりが出てきて、なかなか気持ちは休まりません。かえって暇な分、マイナスなことばかり考えてしまいます。
そのうえ、だんだん明け方に寝て夕方にやっと起きる昼夜逆転の生活にもなってしまい、これも自己嫌悪の種になってしまいました。医師からは「規則正しい生活リズムにするように」と言われていたのですが、処方された睡眠剤を使っても、もううまく寝付けなくなっていたのです。そして悪いことに、中途半端に睡眠剤が効いた状態の中で、過食は治るどころか逆にエスカレートしていました。
E子さんは、療養していても自分の状態が改善してきているとは思えなかったので、自分なりにいろいろと情報を集めてみるようになりました。
すると、どうも「パーソナリティ障害」と言われているものや、最近「新型うつ病」とか「非定形うつ病」と言われているような状態に自分は近いのではないかと考えるようになり、E子さんは思い切って、これまでの薬物療法中心の診療とは別に、精神療法も受けてみることにしたのです。
E子さんは、精神療法を始めてから、徐々に自分が次のような問題を抱えていることが見えてきました。
自分がいかに人からの評価に捉われてばかりいたのか、また、努力し結果を出さなければ自分には価値がないという窮屈な考え方で、いかに不自然な力を入れて生きてきたのかということです。そして、それがすっかり慢性化していたために、自分で自分の心の悲鳴に気づかず、様々な身体の不調を招いていたのだということも、理解できるようになっていったのです。
「いい子」を
演じてきたことへの反動?
幼い頃から、いつも周囲の人間の顔色をうかがって「いい子」を演じてきたE子さん。努力して人に認めてもらうことが、彼女にとっては何よりも大切なことだったのです。
子供の頃から、常に人間関係に敏感で、両親がいつも不機嫌そうにしているのも、自分が「悪い子」だからなのだと感じていました。小学校高学年の頃に学校でいじめを受けたこともありましたが、自分自身ですら大嫌いな自分なのだから、人からいじめを受けるのも当然だと思い、辛くても黙って飲み込んで、親に相談することもありませんでした。
「ウツ」で休職中の私が、なぜ遊びには行けるのか――E子さん側の言い分
――「うつ」にまつわる誤解 その(6)
http://diamond.jp/series/izumiya/10006/?page=3
そんな彼女は、自分のことを「価値のない人間」だと思っていました。「価値がない」からこそ、人一倍努力して目に見える成果を挙げなければ、自分は誰からも好かれないし、生きている資格すらないのだとまで思っていたのです。
そのため、E子さんは何もしないで一日を過ごすことは悪いことのように思っていましたし、「自分が楽しむために時間を使う」のは何より苦手だったのです。E子さんにとって時間とは、常に「何かの為になる」「有意義」なものでなければならなかったのです。
自己否定から徐々に解放され、
「心を休ませる」休み方へ
そんなE子さんにとっては、自宅療養で何もしないでいること自体が怠けのように思えてしまい、何度も「自分は本当は病気なんかじゃなくて、きっと怠けたいだけのダメな人間なんだ」と思っていました。そして、「会社の人たちに、きっと怠け者と思われているに違いない」とも感じていたので、一日も早く仕事に戻らなければと、とても焦っていたのでした。
しかし、この状態を「怠け者」と思ってしまうことも、自分の心の奥底に根強く巣食っている「自己否定」の産物であることがセラピーの中で徐々にわかってきて、やっとE子さんも「心を休ませる」休み方ができるようになっていきます。
すると、それまではいくら寝ても取れなかった疲労感や倦怠感が少しずつ薄らいできて、不思議なくらいエネルギーの高まりが実感されるようになったのです。
E子さんは現在も療養中ですが、最近ではセラピストの助言もあって、「やってみたい」と思ったならば「遊び」にも出かけてみるように、少しずつチャレンジし始めています。
「遊びに行ける」のは、
改善の証
「~すべき」「~してはならない」という「頭」の命令に常に従って窮屈に生きてきたE子さんのような人は、自分の「心」の「~したい」「~したくない」という声が聞き取れない状態に陥っているものです(詳しくは第1回をご参照下さい)。
そこからまずは、「心」の声を聴くことがわかるようになり、それを邪魔する「頭」由来の古い価値観(例えば「遊んだりしていてよいのか?」)の存在に気がつくようになります。そして、その「頭」の批判に惑わされずに、「心」に従った行動ができるように精神療法は援助していきます。
ですから、特にE子さんのようなケースでは、「遊べるようになる」ことは、大きな改善の証でもあるわけです。これは典型的なうつ病(内因性うつ病)のケースにも当てはまることで、治療過程の後半で、やはり「遊ぶ」ことが大切になってくるものなのです。
本人の考え方がこの「柔らかい状態」になっていないままに社会復帰を急いだケースは、私の経験上、むしろ早期に再発してしまう確率がとても高いという印象があります。