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読書感想文コンクールの提出期限は、8月24日(木)である。

いつもなら
「まだまだい~な☆」
と言って、テレビの前でゴロゴロしているが、
今年は少し違う。

いや、毎年ゴロゴロしながらも
「後で痛い目にあうんだろうな」というソワソワ感に
さいなまれながら横たわっていたところは同じである。

でも、去年のようにはなりたくない。

昨年、前日になって本を開き、
母に隣りに座られながら感想文を書いた記憶がある。
本を読み終わったのが午後10時。
僕は自分の机が無いので、
廊下のドアを開けた店にあるアップライトピアノを机代わりに
取り組んだものだ。

(僕のうちはお店をやっている。
 家と合体していて、戸をあけると我が家の廊下につながる。
 お店は家の北側にあり、コンクリートの冷たい感じがするのか、
 何だかひんやりとする場所だ。
 家の敷地内で唯一、クーラーのある部屋でもある。)

母は、自称『国語の先生』である。
「この素晴らしい才能を、こんな荒野に埋もれさせておくなんて
 もったいない。」
が、口癖。
母が幼少のみぎり、この手のコンクールではいつも
表彰されていたと言う。
母の実家には表彰状が束になっているとか。
見てみたいものである。

ただ、その言葉、
あながち嘘とも言えないと感じるときがある。
僕には3つ上の兄がいるが、
通知表はさえないのに、夏の感想文コンクールでは
いつも表彰状をもらってくる。

母の手が入っているからだ。

その兄の弟である僕も、
もれなく母の「手」にかかる。

午後10時―。
小一の僕はもう就寝時間。
僕の頭を睡魔が両手で右・左・右と揺さぶる。
もう、思考能力は完全に停止していた。

その様子を見た母は、
「もっと早くやっておかないからよ!!!
 どんなに眠たくても、明日までに必ず書き上げるんだよ!!」
と渇を入れる。
その瞬間は背中に物差しが入ったがごとくであるが、
2分も立つと僕は夢の住民。

結局、下書きは母が書くことになった。
母は僕に10問の質問をした・・・らしい。
僕の覚えているのは第4問までだった(笑)。

約2時間、僕はほって置かれて
午前0時30分ごろ、揺さぶり起こされた。

広告の裏には母の字がびっしり。

第一の関門。
母の字が読めない。
母の字はきれいであるが、
文として読みこなせない。
正しく言えば、文章を読み取れないのだ。
文が難しいからなのか、それとも脳が寝ているからなのか
・・・僕の能力が追いついていないからなのか・・。

第二の関門。
書かれている文の順序が分からない。
変な記号で字や文が挟み込まれている。
文はどうつながるのか。

第三の関門。
原稿用紙の使い方が分からない。
どこからどこまで書けばよいのか。
間違えると母からのゲキが飛び、
せっかく書いた文を全部消さなくてはならなくなる。
「あ~☆ せっかく書いたのにぃ!
 こんなことをするのに、どんな意味があるんだぁー!!!」


消しゴムのかすが山を造る中、
それでも少しずつ清書原稿は進み
あと原稿用紙半分とまでなった。

ところが広告の裏に書かれた下書きは
あと数行、その余白を満たせない分量。

「ちょっと待ってね。」

僕は丁度よいとばかりに
その場に伏せ、眠りについてしまった。
翌日、僕はいつもの布団で寝ていた。

心配になり、出校日の朝原稿用紙を見てみると、
だんだん汚くなる字のあとに、大人の字で最後のまとめが・・・。

眉をひそめて母の顔を見つめると、
「だって、何回起こしても起きないんだもん。
 だから、書いておいたよ。
 今日の宿題だから、これを出しておいで!」
と・・・。

僕は半泣き。

山場はそこじゃない。

じりじりと暑い中、とぼとぼと学校へ。
担任の先生が見守る中、
原稿用紙を開いて配膳台の上へ提出。

始めの人から15人ぐらいの人は
何事もなく提出できたが、
僕の3人前になると突然
先生がひょいと原稿用紙を持ち上げ、
中身を見始めたのだ。

「どうしよう、先生気付いちゃうかな???
 僕、怒られるのかな・・・。」


そう思うと、のどの奥が締め付けられるような感じがして、
顔がすごく熱くなった。
目の奥からジワッと涙があふれてきた。

息がとっても苦しくて
声が出ない。
「うっ、うっ、うっ・・・」
先生には気付かれたくない。

僕の並ぶ列に接する席の子が
「あれ?東山くん、どうしたの?」
ひそっと言った。
それにつられてみんながひそひそと言い始める。
原稿用紙に目を通す先生も、クラスの皆がざわめき始めたら
気付かないはずは無い。

「東山くん?」
先生は声を掛けてくれたが、
僕は返事をしない。
・・・声が出せないのだ。

顔を見られないように
無言で原稿用紙を出し
自分の席まで戻った。

先生は僕の席まで来てくれたが
何を言われても声が出せない。
あの時の気まずい雰囲気、
あの苦しさを忘れることはできない。


今年は去年と同じことはしたくない。
とりあえず、本を選ぼうと思う。










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東山
性別:
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自己紹介:
海月くらげさんにプレゼントしていただいたイラストです。
「リコーダーで音を外す学ラン新一」
ぼくのキャラにぴったりです(笑)。
ありがとうございます!!